山尾志桜里政務調査会長は6日夜、国会内で記者会見を開き、(1)2016年度予算の前倒し執行(2)TPP(環太平洋経済連携協定)の承認案と関連法案をめぐる政府の対応――について発言。一部週刊誌報道で指摘された自身の政治資金に関する問題についてもこれまでの調査結果を報告した。

 安倍総理が5日の閣議で、16年度予算の公共事業など合わせて12兆1000億円の事業について、今年9月末までに8割程度が契約済みとなるよう予算を前倒しして執行するよう各担当大臣に指示したことについて、「国内でアベノミクスの効果がなくなってきていることへの焦りの表れではないか」と指摘。「こうして公共事業の予算を前倒ししていくというメッセージが、ただでさえ上がっている資材費や労働力の不足に拍車をかける結果になり、それが被災県の復興事業に対して悪影響を及ぼしやしないかということを懸念している。国民の生活に着目せずに政権を維持するために政策を繰り出しているという印象。私たち民進党としては、綱領にもあるように、人への投資で持続可能な経済成長を重視していく。こうした立場でしっかりと対策を打ち出していきたい」と述べた。

 5日に衆院で審議入りしたTPPの承認案と関連法案をめぐっては、政府の情報公開に対する姿勢を問題視。「私たちが議論していくに当たって要求した資料について、高鳥副大臣の説明と政府の対応が異なる。そのように異なった経緯について高鳥副大臣に説明を求めたが、同僚議員のパーティーを優先して会議にも来られなかったと聞いている。辞任した甘利大臣の後任として、代理として署名式に出席した際も副大臣の緊張感のなさが随分と指摘をされたが、実際にこの協定が審議入りした今でも政府全体に緊張感がないのではないか。そうした政権の緩みやおごりにあらためて危惧(きぐ)を覚えている」と指摘した。

 自身の政治資金問題については、2012年分の政党支部の収支報告書に記載されているガソリン代が突出しているとされている点には、「収支報告書と帳簿に当たり今日まで調査をしてきた結果、報道されているようにガソリンのプリペイドカードを大量に購入したという事実は存在しないと考えている。従って、このような大量のプリペイドカードが換金されたり、関係者や有権者に配布をされたような事実はないものと考えている」と説明。こうした考えに至った経緯として、事務所のガソリン代を調べたところ、その前後から見ても12年分が突出しており、月に30万円を超えたのは2011年8月から2012年5月の期間のみで、この期間が事務所に在籍していたある秘書の在職期間とほぼ合致していたこと、ガソリン代はプリペイドカードのレシートと引き換えに事務所が払っていたこと、通常は同じカードを追加のチャージをしながら運用しているが、2011年8月から2012年5月までのレシートを調べ、カードの番号と入金情報を照合した結果、同じ日に多数のレシートが提出されていたり、追加のチャージの履歴がなく事務所のスタッフが保有しているカードと無関係と思われるレシートが多数あることが判明したことなどを報告した。特に、突出していると指摘のある2012年分については、追加のチャージの履歴がなく無関係と思われるレシートの枚数135枚分のレシートのうち当該秘書が在籍した12年4月までに使われたのがその92%に当たる124枚だったとして、「多額のガソリン代金の支出にこの秘書が関与している蓋然性が相当高いと判断している。さらに、セルフスタンドのプリペイドカードの発券機には不要のレシート入れが備え付けられており、他の人が使用した不要のレシートを持ち帰ることができる状態にあった。この秘書が当時会計実務を担当しており、レシートによってガソリン代を請求し、事務所の現金からこれを支出することも可能な状態だった」と述べた。

 このほか、政治収支報告書の虚偽記載や支持者が自主的に運営している団体「桜塾」の活動、落選中から家主が厚意で山尾議員に貸しているという建物「桜館」などをめぐる指摘についてもそれぞれ丁寧に説明。「今報告した通り、収支報告書の事務処理の誤りや友好団体との関係で誤解を招くような記載が存在することが明らかになった。これらの件について、私の監督が至らないところであり、申し訳なく思い、猛省している。今後は、私の監督を徹底し事務所体制をしっかりと整えるとともに、外部の専門家の指導も受けながら国民の皆さんの期待に応えられるよう、精一杯努力をしていきたい」と結んだ。

 山尾政調会長は調査結果を報告した後、1時間以上にわたって記者からの質問にすべて応じ、今後も求められれば説明を尽くしていくと表明。当該秘書をめぐっては、「必要であれば法的措置を取るつもりもある。今言えるのは、弁護士の助言をもらいながら適切に対処していくということ」だと述べた。